青嵐緑風、白花繚乱
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


      3



 JRの快速乗換駅周辺という、ここから一番間近い繁華街にて。放課後や休日に、季節に合わせての愛らしく装って、それは軽やかに笑いさざめきながら待ち合わせる姿が話題になってる3人娘だとの評を聞き。あらまあと面映ゆげなお顔になったお姉様がただったのも束の間のこと。殿方と一緒のところも目撃されているようなと話が進み、それはあんまりいい評判じゃあないのではと、ついつい身構えかけたものの、

 『警察の方が護衛に付かれることもあるんですのね。』

 そうか、そういう方向へ解釈されてますかと。安堵していいやら、一部のお一人だけは残念がったほうがいいのやら。不穏な遊び歩きだとの誤解は受けていないらしかったものの、

 「少なくとも、
  それが“私たち”なんだという把握はされているようですね。」
 「制服姿じゃあない時でも?」

  何でまた名指しで判るんだろか。

  あれじゃないですか?
  ウチの学園の生徒フリークが、
  お、あれは今年度ピカイチの草野さんちのご令嬢だ、
  白百合さんて呼ばれてるんだってな…なんて、情報をやり取りしてるとか。

  そんな人ってホントにいるんですか?

  なに言ってますか、先だってのスケート教室を忘れましたか?

  林田には忘れられんのだろうな。

  お、なかなかなツッコミをしてくれましたね、久蔵殿。
  シチさんを苛めている相手には見境なしですか。

  こらこら二人とも論点がずれてるったら

 ……と、由々しき事態もまぜっ返してしまわれるほどに、相変わらずなお人たちでございましたが。そんな脱線をしつつも、どこへ向かわんとしているやりとりなのかは さすがにお互いに見えてもおり、

 「ま、クリスマスとかバレンタインデーとか、
  特定のイベントのある日ででもない限り、
  シチさんとあのヒゲのおじさまとが一緒にいたところで、
  事情が判らない人からすれば、何か感じるのは難しいんじゃあ。」

 さては不純異性交遊なのでは?とまで、深読みして怪しむ人はおりますまいと。プラの蓋つきカップに入ったカフェラテを、少し細いストローにておしゃれに味わいつつ、

  クリスマスだったかに、
  久蔵のところの家令夫人が、
  浅野某に似た男性と一緒だったシチさんを見たとの
  目撃談を告げておいでではありましたね

 ……と平八が続けたものの、

 「クリスマスだったからな。」
 「そうですよね。」

 同じ落としどころへ話を持ってく、紅ばらさんとひなげしさんだったもんだから、

 「二人とも、ひっど〜い。」

 さっき、あいちゃんたちも言ってたじゃないですか、どっか目立ってカッコいい人だったから、入学式で見かけて以降も新入生の間で話題だったって。白百合さんが思わず身を揉んでの抗議をしたけれど。

  でもですよ? 白百合のお姉様にはもっとこう、
  誠実そうな、堅実で清潔そうな人のほうがいいという声も。

  …………。(頷、頷、頷)

  …久蔵殿、そこまで大きく、しかも3回も頷かない。/////

 冷やかされるのも敵わぬが、何がなんでも落とし話にされるのもまた…勘兵衛様を庇いたくてか、同じくらいに物申すしたくなるほど 何だか微妙な心持ちとなる白百合さんであるらしく。
(大笑)

 「お嬢様ほど悪の魅力へも惹かれやすいとも言いますが。」
 「…警視庁の警察官のどこが悪なんでしょうか。」

 ですから“悪い人”じゃなくって、あくまでもニヒルな雰囲気とか、ワイルドな男の色香に、慣れのないお嬢様は惹かれやすいって話ですったらと。いくら何でもそこまで貶めちゃあいないとばかり、平八がどうどうどうと悩める白百合さんを宥める傍らで、

 「ただ単にダメダメな男だがな。」
 「………久蔵殿。」

 どうしたんでしょうか、今日の久蔵殿は。…なにが? ですから、ツッコミがびしばしと決まりまくりじゃないですか。思ったそのまま口にしているだけだ。さては、おネムですね。何んですか、そりゃあ……と。彼女らだけだとこのように、どこにでもいる普通の少女らの会話そのままに、ところどころでオチがあったり、突っ込んでみたりという、気安い会話をポンポンと交わしている ざっかけなさなのだけれども、

 「…………?」

 ふと。静かな空間の周囲を取り巻いての揺れる若葉のさざめきの音の中、誰ぞかの気配に気づいたらしい久蔵が、風の流れを逆上ってのそちらをひょいと無造作に見やって。その仕草に釣られ、七郎次や平八も手元のあれこれを小さめのポーチやら巾着袋やらへ片付けながらお顔を上げれば、

 「あら、あれって…。」

 少しばかり段差を高く築かれた舞台の側の両端の、いわゆる“そで”にあたろう部分から始まって、場内をぐるり取り囲む、アイビーの蔓が絡んでいての いかにも古びた石づくりの壁の一角。廃墟の土台に居残った戸口のように、扉もない刳り貫きになっている演者の出入り口から出て来た人たちがあり。たまたま其処に居合わせたというにしては、こちらを見やった片やが ホッとしたような会釈をもって手を挙げたので、

 「わたしたちを探してたんでしょうか。」
 「そうかも知れませんね。」

 表情が朗らかに和んでいるのは、やっと見つけたという安堵からだろう、やはりやはり此処の制服のセーラー服姿のお嬢様二人連れ。濡れ羽色とはよくいったもの、品よく濡らしたような つややかな黒髪を腰までと伸ばしておいでのお嬢様は、先の五月祭で“五月の女王”を任じられた右京寺さんというお人。先程 話に出たスケート教室の折、彼女がこそりと構えていたらしき、こちらの3人娘たちへの微妙な反発とやらが発覚したものの。突発事に翻弄された勢いからか一気に爆発してくださったお陰様、結構あっさり和解も出来て。今では…その折のお嬢様らしからぬ武勇伝という“内緒”を共有しつつも隠し合ってるという仲の、気の合うお友達同士だったりし。殊に、お弁当箱を広めのスカーフで包み終えた紅バラさんなぞ、日頃はクラスメートでさえ名前が出て来ず、そんなせいか知らぬ人扱いで視線さえ向けぬことも多いズボラっぷりなのが。彼女へは、軽く小首を傾げる格好で会釈したほどなのだから…一応は覚えておいでだった模様。
(こらこら)

 「どうしましたか、右京寺さん。」

 私たちもそろそろ教室へ戻ろうかと思っていたのですがと、昼休みもじきに終わりますのにという格好で、平八が落ち着いた口調になってのお話を振れば、

 「それが…こちらの彼女から、ちょっと頼まれたことがありましたので。」

 すぐ後ろへ連れて来ていたもう一人を軽く振り返る。そちら様は、学年こそ同じだがクラスまでは同じじゃあなかったような…と、見覚えはあるお顔へ、何か自分たちへのお覚えがあるお人なんだろかと、何とか心当たりを思い出そうとしかかっていた平八と七郎次だったところ、

 「……ゆっこや きぃに咬みついてた。」
 「え?」
 「…………あ。」

 手短に ぼそりと口走った久蔵さん、今日はやっぱり なかなか頭の回転がよろしいようであり。
(失敬な) スケート教室よりももっと以前の話、あのガールズバンドの下級生4人娘へ、久蔵と仲がよすぎるとやっかんで咬みついていた、シンパシィグループの内の一人であったらしく。

 「〜〜〜。」

 その指摘が当たっていたからだろう、その前から既に久蔵からはお顔を隠すよう、びくびくおどおどとしておいでだったし、素性を言い当てられるとますますのこと、お顔をうつむかせてしまったようだったが、

 「そのお話はよく知りませんが。」

 彼女もまた 元を正せばこの紅ばら様へ、そちらはベクトルが逆ながら微妙な遺恨のようなものがあった身の綾子様が、まあまあと場を宥めるように泰然とした態度を割り込ませたのがさすがにお見事で。場をまとめ、舵を取り、毅然と話を進めるというお立場に慣れておいでの、

 “所謂、委員長タイプってところでしょうか。”

 なかなかに頼もしいお人と仲直り出来ててよかったなぁと、こそり思った平八だったのも今はさておいて。どうやらそのお嬢さんから、自分たちへと引き会わせる仲立ちを頼まれたらしい右京寺さんらしく。

 「この方は、二年〜組の▽▽江威子さん。
  私と同じくテニス部に在籍なさっているの。
  お顔だけは御存知なようだけれど、
  今日のお話はそちらの関わりからじゃあないらしくて。」

 それでも気まずいのか、それとも他にも気の重い理由があるものか。話しかける切っ掛けさえ探しあぐねておいでだったようなので。そんなもぞもぞが数日ほど前からこちらも気になっていた右京寺さんの方から、一肌脱いでの声をかけてみたのだそうな。そして、

 「私のお節介も此処までということで。」

 その詳細をこそ、他言したくはない事情らしいと感づいてもおいでだったのだろう。身の引き際も心得ておいでの綾子様。初夏花3人娘と江威子さんとへ等分に、それは優雅ににっこり微笑うと、校舎のほうへと立ち去ってしまわれて。この女学園のお嬢様の王道をゆくお人だなぁと、改めてつくづくと思い知らされた、こちらは猫かぶりのお上手なお嬢様がたが、

 「えっとぉ。………それで?」

 置き去られたような格好の江威子様とやらと、あらためて向かい合う。久蔵に関して、同い年らしいのに、しかもその場にはいなかったのにもかかわらず“三木様”と呼んでいたほどのご贔屓らしく。とはいえ、今はどうやらそっちが関わる御用じゃないらしいのは、右京寺さんのお言いようがなくとも明らかで。少しほど古風な型の濃色のセーラー服のその肩先に、きれいに切り揃えられた黒髪の先を揺らしてうつむく、ちょっぴり華奢な彼女は。テニス部だとは言われにゃ判らないくらい、妙におどおどしておいで。よくよく見れば口許がかさついており、目許も落ち着きがなくて。よほどに重い心痛を抱えていなさるのは一目瞭然。それが、こちらの3人とも関わりがあるということだろか? ともかく、まずは訊かなきゃ判らないとばかり、平八が水を向けたところ、

 「  ………あの。」

 蚊の鳴くようなお声がぽそりと出はしたが、うつむいたままな視線はなかなか上がらず。紅バラ様こと久蔵の、意識してではないながらも…凛然とした視線や態度の鋭角なところが、今はおっかなくて落ち着けないのかなぁと感じた白百合様としては。

 「如何しましたか? お話、伺いますよ?」

 いつまでもお待ちしますから、落ち着いて…と。話しやすくなるようにと、その手を彼女の肩へ置き、励ましかかったところ、


  「………っっ!!」


 どう例えたものなやら。苦手だしおっかないミツバチが、羽音とともに急接近して来たのを反射的に恐れたかのような。七郎次の手が触れたかどうかという間合いで、びくくぅっと肩を跳ね上げ、その身を避けた江威子さんだったものだから。

 「あ、えと。ごめんなさい、いきなり触れて驚いたのですか?」

 そこまで人間不信なのだろかと想いが至り、自分への反応として傷つくどころじゃなかった七郎次だったのは、多分

 「…………っ。」
 「久蔵ど…、三木さんも そこまで怒らないの。」

 お弁当箱を入れていた巾着袋をお膝から転げ落とす勢いで、憤怒とともに立ち上がった久蔵の反応の大きさに、あっさり呑まれてしまったから。江威子さんへ掴み掛かりかねないほどのお怒りらしき紅胡蝶様を、それこそ捕まえての何とか押し止めている平八になり代わり。話を聞く役を続けねばと思考が切り替わったお陰様、結構手厳しい反応をされたことも流すことが出来はしたものの、

 「…………。」
 「……もしかして。」

 うつむいたままブルブルと震えてさえいる彼女だと、間近にて見て取った白百合さん。今のは咄嗟の反応です、あのあの失礼をごめんなさいという空気でもなく、むしろ依然として七郎次を恐れているような、そんな江威子さんなのがありありとしており。となれば…と、拾えた事実が一つ。

 「アタシへの“鬼百合”という剣道部での陰口を御存知なので?」
 「シチさん、シチさん。」

 そうじゃないでしょうが、って、久蔵殿もいい加減に落ち着いて。今日のヘイさんは、突っ込んだり宥めたり、なかなかに大忙しなボジションなようである。(…それも違うぞ)





       ◇◇◇



 相談に来た少女が立ち去ってから。すっかりと姿が見えなくなるまで遠ざかるのを、それぞれの心の中にてカウントしての…さて。

  「……う〜〜ん。」× 3

 これはちょっとアレですねと。なかなかに難儀な話を持ってこられた当事者さんたちが、それでもさしたる動揺はないまま。強いて言や困惑に眉根を寄せつつ、どうしたもんでしょうねとお顔を見合わせてしまっており。先程の彼女ほど焦燥しないのは、さすがは これまでの大騒ぎの蓄積の、格や派手さが違うというところでしょうか。
(威張れることじゃないぞ〜) というのが、彼女が持ってきた心痛の事情というの、物凄く大雑把に言うなら、

 「全然の全く、言いがかりもいいところなんですのにね。」

 特に疚しいと思うこともない、そんな事情だってのになんでまた、それへ振り回されてる彼女なんだか。………。(頷、頷) まあまあヘイさんも久蔵殿も。目立つからこその弊害ってやつでしょか。そういうのへは無頓着だったのは事実ですが、わざわざ関わらなくていいことですしね。もしかして、首を突っ込んでたらこういうことへ発展していたかもしれない、お誘いやらお付き合いってのが少なからずあちこちにあったり、誘いをかけて来ていたりしたのかも知れませんが、

 「まあ、何というか。」
 「そういうのへ引っ掛かるほどピュアじゃないというか。」
 「………。(頷、頷)」

 そこで大威張りの堂々と頷いてどうしますか、久蔵。あらだって、疑わしいもの相手には本来だったらそうすべきことではありますよ?と、大人や保護者ならというご意見としてフォローした七郎次ではあったれど。とはいえ…と続けて、

 「思春期の何かと覚束ない少女では、視野狭窄にもなりますか。」

 オレオレ詐欺に容易く引っ掛かるご老体へと意見出来ないほどに、他愛ない見え見えの策略へも案外とあっさり引っ掛かりやすく、揺れ動きやすいのが そんな年頃の子らだろう。口では世間へも相当に馴染んでいるよ知ってるよというような物言いをし、そんな美味い話があるはずないとか、そんなドラマみたいな図りごとが自分へ降りかかるはずがないとか偉そうに言い切るような子でも。たった一人でいるところへそんなメールが来た日にゃあ、動転しまくった挙句、誰にも相談しないまま相手の思う壷へ転がってくのもその年頃だ。例えば、知り合いの誰某ちゃんが困って呼んでるとか言われたら、言われた通りにしないと事態がまずくなるから…というよりも、その誰某ちゃんから友情薄いと誤解されたくなくての つい、言われるままに行動してしまいかねなくて。

 「それとも。アタシたちが全くの全然無反応なもんだからと、
  搦め手を使い、彼女をまずはと取っ捕まえてのオトリにしたのかも。」

 そんなことへまでいちいち罪悪感を感じて動揺するようなヲトメ心は、やっぱり持ち合わせてはいませんがと。現に今の今、こういう判断が出来るほどに落ち着いての泰然とした態度のまんまで、現状把握に勤しんでおいでの彼女らなのであり。

 「背景を辿るのはそうそう難しくはありません。
  Q街でゴロ巻いてる顔触れは年齢層別にリサーチ済みですから、
  直接話し掛けてきた女子は小物過ぎて割り出せずとも、
  今訊いた手口を使いそうな奴くらい、すぐにも精査出来ますが。」

 「……前から思ってたんだけど、
  もしかしてヘイさんたら、佐伯さんからそういう話も聞き出してるの?」
 「ノーコメント♪」

 言えませんようとウィンクつきで軽妙におどけて見せてから、だがだが。…でもねぇ、と。平八がその態度の空気をふと改めての呟いたのが、

 「何でまた、シチさんを、しかも名指しなんでしょうか。

 まずいことにしたくなきゃあ、草野さんちのお嬢様、白百合さんて呼ばれてる子を連れてこいだなんてねぇ、と。意外なお話へ飛び出してきたこちらのお仲間のお名前へ、恐らくはさっきの彼女以上にワケが判らず、うむむと眉を寄せてしまう彼女らであり。

 「勘兵衛さんだろう壮年殿との待ち合わせを目撃されたかららしいと、
  それをネタにされているらしいとのお話でしたけれど。」

 そこまで素性が判っているなら、いっそじかに呼びだしゃあいいのに、そこは小娘で私らの親御がしいているだろうガードが手ごわいと思うのか、それともおっかないものか。それにそもそも そんなことでなら私たちだって、例えばゴロさんや兵庫せんせえとQ街で待ち合わせての一緒にいることって、ままありますのに、

 「そっちは、お医者で校医のせんせえだからとか、
  下宿先の大家さんだからってことで、
  ノーカウント扱いされてんでしょうかね。」
 「???」

 ああえっと、だからね久蔵殿。日頃からも一緒にいるのが不自然じゃないと言いますか、およそ男女間の何かしらが発生しなかろう間柄だと思われやすいというか……。

 「〜〜〜〜〜〜。」
 「久蔵殿が落ち込むならともかく、
  自分で言った言い回しに落ち込んでどうしますか、ヘイさんたら。」

 そういう“お約束”ネタもともかくとして。

 「でも…ちょっと待ってくださいな。
  ゴロさんや兵庫さんにしたって、
  アタシらの日頃ってものへ通じていなければ
  問題のない殿方だとスルーされる理由には、
  繋がらないんじゃあありませんか?」

 確かに、女学園の生徒だと判っていての脅迫じゃあなければ、さっきの江威子さんへの脅しにしたって、成立しない部分が多々あった。学園始まって以来という大不祥事なんて言われちゃあ、誤解だと言い張る根性があったとしたって、あっと言う間に萎えてのただただ震え上がっちゃうのも判る。でも、

 「Q街で目立ってたアタシらのうち、
  警察官の勘兵衛様と顔合わせの機会も多いアタシを呼ぶのって、
  一番まずいって判りそうなもんじゃないのかな?」

 「…っ。(そっか。)」

 「江威子さんが此処の女学園生だってことを確かめてあり、
  ゴロさんや兵庫さんでは
  周囲も怪しみようもなくって脅しのネタにならないと判断しているんなら。
  そこんところが矛盾してるってことになりますかね。」

 でも、あいちゃんたちの言いようからだと、あくまでも新入生たちが式典でも見たことがあってのっていう順を踏んだうえで、勘兵衛さんは刑事さんらしいと思ってたって話だったじゃないですか。そうか、外部の人間にはそこまでの詳細はさすがに判らないか。そうそうたやすく素性が割れていては、私服刑事って意味合いがなくなりますものね。

  「それに、」

 と、久蔵が改まっての口を開いて。

 「学外で待ち合わせなんて、俺たちは滅多に構えちゃあいないぞ。」
 「え? そうなんですか?」

 学校への車での送り迎えは原則厳禁だが、それでも何かしらあった時に来てくれるくらいのもの。どこかへという外出の場合、兵庫が家まで迎えにくるのがセオリーだと ぼしぼしと告げた久蔵だったのへ、

 「そういえば、
  わたしもゴロさんとどっか行くときは、大概家から出掛けてますものね。」
 「わあ、いいんだ…。」

 じゃあなくて。
(苦笑) う〜〜〜、何をどこまで知ってる相手なんだろかと。とっくに予鈴も鳴ったというに、うんうんと唸ってしまっているひなげしさんや、そうとは判りにくいながら…眉間が寄っている紅ばらさんであったのだけれども。

 「………つか、この一件、どうしよっか。」

 ふと。白百合さんがそんなお声を掛けていて。

 「何がです?」
 「???」

 「だから。いつもいつも“進歩がない”と叱られてるじゃないですか。」

 「あ。」
 「…☆」


    さて、ここで問題です。(こらこら)








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  *こういう展開な上、
   別のお部屋でですがちょこっと落ち込むタネを頂き、
   気分転換にと家事に打ち込んでたもんで、
   続きのUPが遅れました、すいません。

  *降りかかって来た事件の真相は後回し。
(おいおい)
   …と言いますか、実は今回のお話、
   随分と前に
   “ゲームブック”みたいのが仕立てられないかなと思って
   あらすじを練ってた代物なんですよね。
   話のところどころに分岐点があって、
   どっちを選ぶ?となっているアレ。
   大昔にも紙媒体でやってみたことがありまして、
   選びようによって果てで迷子にならぬようにという、
   フロウチャート作りが なかなか大変でしたが。
   その点、Webでという仕立てだと、
   リンクって格好で選んだルートへも飛びやすいんじゃないかとか
   そうと思ったのではありますが。
   それをするとエピソードにムラが出来るというか、
   選んだルートによって
   “そんなやり取りあったっけ?”ということにも成りかねず、
   お遊びの多いこのシリーズでやるのは却って難しいと判明。
   大元のお話だけ、今回使うこととなった次第です。
   その第一の分岐が、

    1.このまま軽快に彼女らだけで突っ走る
    2.大人の保護者の皆様へも相談してみる

   だったのですが………さて?


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